上智大学キリシタン文庫は、昭和14年（1939）2月5日（日本二十六聖人の殉教記念日）、日本におけるキリスト教宣教史、および、宣教に伴う日欧文化の交流を研究するとともに、その知識と成果を広く普及することを目的に故ヨハネス・ラウレス神父（上智大学教授）によって設立されました。
学際的視野から国内外の「キリシタン」関係史資料の蒐集・研究・出版などの事業を行ない、その成果を公表して本大学における教育と研究に役立てると同時に、キリシタン研究に関する国内随一の和・洋両書の専門図書館（文庫 Library）として広く学界に貢献しています。
蔵書は約16,000冊を数える他、16～17世紀に西欧で作成された稀覯本・古地図以下、キリシタン大名（大友宗麟・高山右近ら）の書状、江戸時代の「転び証文」や切支丹取締りの高札の原物、潜伏キリシタンの信心具（マリア像・ロザリオ）、さらには明治時代に刊行されたプティジャン版や天主公教会の出版物など、貴重資料2,500点あまり（2025年4月現在）を所蔵しています。
また、日本におけるキリシタン研究を牽引する戦前以来の全国学会「キリシタン文化研究会」の運営を担当し、同会主催の文化講演会／研究大会（毎年12月第一日曜日）開催を支援しています。
上智大学経済学部教授J・ラウレス師（1928年来日）、キリシタン関係の史資料蒐集に着手
（例）
・首都圏、長崎などの教会関係者（聖職者・信者）からの寄贈
・1936年に北京の北堂教会図書館（現・中国国家図書館移管）、1941年にマニラのドミニコ会修道院図書館などを訪問
・入手不可の史資料については写真撮影を行い、写真版を作成
日本26聖人の殉教記念日、ラウレス師によって“キリシタン文庫”創立
※上智大学構内・旧高島邸1階、 「クルトゥルハイム」（上智大学学長 H・ホイヴェルス、ラウレス両師が1931年1月25日に開所した「カトリック・インフォメーション」の後身）内の一室
同日、柳谷武夫・片岡弥吉・海老澤有道氏らによって、上智学院内に 「キリシタン文化研究所」（1947年改称「キリシタン文化研究会」）創設
キリシタン文庫所蔵書類、キリシタン文化研究所の所管に
ラウレス師、キリシタン研究関係の英文書誌目録
『Kirishitan Bunko: A Manunal of Books and Documents on the Early Christian Mission in Japan（吉利支丹文庫）』を編纂・発刊
※1941年・1951年に補遺、1957年に初版の改訂増補版を発刊
クルトゥルハイム内のキリシタン文庫所蔵資料、上智大学図書館での受け入れ開始
上智大学2号館（法学部）の「キリシタン文化研究会」研究室（211号室）に移転・整理（毎週水曜日開室）
創設者で初代所長のラウレス師、死去（67歳）
※キリシタン文庫、短期間の一時閉鎖
キリシタン文化研究会、キリシタン文庫附属の「キリシタン文化研究室」を一般開放
上智大学キリシタン文庫、「閲覧規定」策定
（この頃から毎週水・木・土曜日の閲覧事務開始）
A・シュワーデ師、第2代キリシタン文庫所長に就任
併せてキリシタン文庫に事務職員常設
上智大学キリシタン文庫、上智大学7号館13階へ移転
尾原悟師、第3代キリシタン文庫所長（主任）に就任
マイクロフィルム蒐集事業開始
ヨーロッパ各地の図書館、文書館所蔵のキリシタン関係文書（宣教師の日本報告書簡）のマイクロフィルム
・ローマ：イエズス会文書館（Archivum Romanum Societatis Iesu）所蔵の日本・シナ関係文書（Japonica-Sinica. 略称Jap.Sin.）
・マドリード：王立歴史学士院図書館（Biblioteca de la Real Academia de la Historia）所蔵史料
・リスボン：アジュダ図書館（Biblioteca da Ajuda）所蔵の写本集「アジアのイエズス会士（Jesuítas na Ásia）」
・ロンドン：大英博物館（British Museum）所蔵のマースデン文書（Marsden Manuscript）
主任尾原師、文庫収蔵マイクロフィルムの日本語書誌目録
『キリシタン文庫 イエズス会日本関係文書』を編纂・発刊（南窓社発行）
キリシタン文庫、上智大学中央図書館8階へ移転
髙祖敏明師、第4代キリシタン文庫所長に就任
データベース化（「ラウレスキリシタン文庫データベース」）作業開始
川村信三師、第5代キリシタン文庫所長に就任
佐久間勤師、第6代キリシタン文庫所長に就任
新システム「ラウレスキリシタン文庫データベース」運用開始
川村信三師、キリシタン文庫所長に再任（第7代）
初代（1939～59年）
ヨハネス・ラウレス神父
Johannes Laures, S.J. (1891-1959)
ドイツ・ラインラント出身 イエズス会員
昭和3年（1928）来日
上智大学教授（経済学部 → 文学部史学科 初代学科長）
第2代（1964～69年）
アルカディオ・シュワーデ
Arcadio Schwade(1920-2007)
ブラジル出身 イエズス会員（在任当時）
昭和36年（1961）再来日
上智大学教授（文学部史学科）、のちルール大学ボーフム
第3代（1969～95年・主任）
尾原悟神父
Satoru Obara, S.J. (1929-2016)
広島出身 イエズス会員
上智大学教授（文学部史学科）
キリシタン文化研究会常任理事（事務局長兼務）
第4代（1995～2012年）
髙祖敏明神父
Toshiaki Kōso, S.J.
広島出身 イエズス会員
上智大学教授（総合人間科学部教育学科・文学部長）
キリシタン文化研究会 第9代会長、上智学院 第9代理事長
のち聖心女子大学学長、聖イグナチオ教会主任司祭（現在）
2024年5月に旭日重光章受章
第5代（2012～15年）／第7代（2023年～現在）
川村信三神父
Shinzō Kawamura, S.J.
兵庫出身 イエズス会員
上智大学教授（文学部史学科）
キリシタン文化研究会 第10代会長（現在）
日本カトリック司教協議会列聖推進委員会顧問
第6代（2015～23年）
佐久間勤神父
Tsutomu Sakuma, S.J.
兵庫出身 イエズス会員
上智大学教授（神学部長）
聖母大学学長、上智学院 第10代理事長
のちイエズス会日本管区長（現在）
